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ダイオード AND を設計してみた [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

ダイオードは、ふたつの端子に印加される電圧によって電流を流したり流さなかったりできる、いわゆるスイッチング素子です。 この性質を利用して AND 回路を構成するというのが、今回のテーマです。

ダイオードを使った AND の原理

ダイオードを使った2入力AND

ダイオードを使って2入力 AND 回路を構成するには、図のようにダイオード2本と抵抗一本を使います。 入力電圧のどちらか一方が 0V に落ちると、出力電圧も 0V に落ちるという仕組みです。


しかし、現実には出力電圧は 0V まで落ちません。 それは、ダイオードに順方向電圧降下 (VF) が存在しているからです。 そのため、出力電圧は、入力電圧よりも VF だけ高い電圧になってしまいます。

VOUT = min(VIN1 + VF, VIN2 + VF)

さらに、入力電圧にも注意が必要です。 論理 "0" の信号は、決して 0V を意味するものではありません。 ある素子が論理 "0" を出力した時の電圧は、一般に VOL というパラメータであらわされます。 VOL の値は、部品のばらつき、電源電圧、使用温度、出力に流れ込む電流などにより影響を受けます。 そのため、半導体では「特定の出力電流 (IOL) を流した時の出力電圧値」として、最小値と最大値を定めるのが一般的です。

同様に論理 "1" の信号について IOH 条件下の VOH が定められています。

CMOS の場合

まず、 CMOS ロジックを使用した回路を考えます。 電源電圧は、 VCC=4.5V と仮定します。 ここでは、普通のシリコンダイオードを使ったとして VF=0.7V とします。


代表的な CMOS ロジック SN74HC04 の出力特性は、以下の表のとおりです。

PARAMETERCONDITIONMINMAXUNIT
VOHIOH=-20uA4.4----V
VOHIOH=-4mA3.84----V
VOLIOL=20uA----0.1V
VOLIOL=4mA----0.33V

CMOSロジックをダイオードANDに接続する

この AND 回路の場合、論理 "0" を出力するためにはプルアップ抵抗に電流を流す必要があります。 IOL=4mA と仮定すると、 VOL(MAX)=0.33 ですので、一方の入力が論理 "0" になった時の最大出力電圧は、以下の式であらわされます。

VLOW(MAX) = VOL(MAX) + VF = 1.03V

これを CMOS ロジックで受けます。 論理回路の入力には、「確実に論理 "0" が保証できる電圧 (VIL) の最大値と最小値」が定義されています。 同様に「確実に論理 "0" が保証できる電圧 (VIH) の最大値と最小値」も定義されています。 先の VLOW(MAX) が VIL の範囲内に入っていれば、もっと具体的には VIL(MAX) よりも低ければ、このダイオード AND 回路は動作する事になります。


SN74HC04 の入力特性は、以下の表のとおりです。

PARAMETERMINMAXUNIT
VIH3.15----V
VIL----1.35V

これを見ると、 VLOW(MAX) < VIL(MAX) ですので、この回路は AND 論理として動作する事がわかりました。

逆に論理 "1" となる場合には、入力電圧が VOH(MIN)=4.4V となるため、ダイオードは OFF し、プルアップ抵抗により VCC=4.5V の電圧が出力に現れます。 もちろん、この電圧は論理 "1" と解釈されます。

LS-TTL の場合

次に Low-power Schottky (LS) TTL を使った回路を考えます。 代表的な LS-TTL である SN74LS04 の出力特性は、以下の表のとおりです。

PARAMETERCONDITIONMINMAXUNIT
VOHIOH=-0.4mA2.7----V
VOLIOL=4mA----0.4V
VOLIOL=8mA----0.5V

LS-TTLロジックをダイオードANDに接続する

論理 "0" を出力する時には、やはりプルアップ抵抗に電流を流す必要があります。 ひとまず、 IOL=4mA と仮定して、あとで検証しましょう。 VOL(MAX)=0.4V; VF=0.7V とすると、 VLOW(MAX)=1.1V です。


一方、 SN74LS04 の入力特性は、以下の表のとおりです。

PARAMETERMINMAXUNIT
VIH2.0----V
VIL----0.8V

つまり、 VLOW(MAX) > VIL(MAX) となってしまい、この回路は AND 回路として働かないという事が判明してしまいました。

ショットキーダイオードを使ったら

問題は、 VLOW(MAX) が高くなってしまうことなので、 VOL(MAX) か VF を低くするしかありません。

そこで、 VF の低いショットキーダイオードを使ってみます。 VF=0.3V と仮定すると、 VLOW(MAX)=0.7V となりますので、ぎりぎり VIL(MAX)=0.8V よりも低くすることが出来ます。

ダイオードでレベルシフトしてみる

論理1出力時のバイアス電流

VLOW(MAX) が高くなってしまうのは、 VF を持ったダイオードを接続したためです。 であれば、上がってしまった電圧を別の VF を使って低くしてやる事も出来るはずです。 そこで、作成したのがこの回路です。


出力部分にダイオードを追加して、 VF だけ電圧を落とします。 また、レベルシフタが働くように、抵抗を追加して以下のバイアス電流を少し流しています。

IBIAS = (VCC - VF) / (RPU + RPD)

この回路では、ふたつの入力が論理 "1" になった時に出力の論理も "1" になる必要があります。 この時の出力電圧は、以下のように計算されます。

VHIGH = RPD * IBIAS

この電圧が VIH(MIN) よりも高い電圧になることが論理 "1" を出力するための条件なので、

RPD * (VCC - VF) / (RPU + RPD) > VIH(MIN)

ここで、 R と RPD の比率を RPU:RPD = 1:r とすると、

r > 0.98

r = 1.5 と仮定し、 IBIAS < 100uA の条件を与えると、

IBIAS = (4.75 - 0.7) / ((1 + 1.5) * RPU) < 100u [A]

これを満たすには、例えば、RPU=22k; RPD=33k のような組み合わせが考えられます。


論理0出力時ので夏と電流

論理 "0" を出力する場合の電圧電流は、このようになります。

ふたつの入力が同時に変化すると

LS-TTLの入力特性

これら二つの入力が、同時に変化する同期カウンタの出力に接続されると、どうなるかを考えてみました。 まず、ふたつの入力電圧を二次元グラフの X-Y にとり、その時の出力電圧をプロットします。 まずは、 LS-TTL で一般的なダイオードを使った場合です。

出力電圧が VIH(MIN) より高くなる領域を「赤」で、 VIL(MAX) より低くなる領域を「青」で表現しています。 その間の灰色の領域は、この出力を受信する素子の特性により、論理 "1" にも "0" にもなりうることを意味しています。 ふたつの入力信号の電圧が、 VOL(MAX) と VOH(MIN) の間を同時に変化すると、図の直線の軌道を通ります。 始点と終点が、灰色の領域にあるので、そもそも、論理が定まっていない事がわかります。 さらに、軌道の途中で「赤」の領域を通過しているため、この回路では「必ず論理 "1" のグリッチが発生する」という事がわかります。


ショットキーダイオードを使った時の入力特性

次にショットキーダイオードを使った場合です。 「赤」の領域を通ることはありませんが、「赤」に近い不定領域を通過しているため、論理 "1" のグリッチが出る可能性が高くなっています。


レベルシフトした時の入力特性

最後は、ダイオードでレベルシフトした場合です。 さらに「赤」の領域から遠い場所を通過していますが、不定領域を通っている事に代わりはありません。 もし、論理 "1" のグリッチを確実に抑制したいのであれば、 AC 的に出力信号の立ち上がり時間を長くした方が良いようです。


ステップアップコンバータ HT77xxA を規格外で使うお話 (9) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

いい感じに白色LEDを点灯させることができるようになったので,効率について考えてみることにしました.

この記事は,メーカが想定している使用例に従わない方法で半導体を使用した,私の個人的な実験メモです.このようにメーカが推奨しない使い方をした場合,結果について誰も保証することはできません.そのため,ご自身の責任の範囲で実験する以外の用途には使用なさらないでください.また,この記事で述べた使い方について,メーカに質問することもご遠慮ください.

入出力の電力を測定するために

効率は,出力電力の入力電力に対する割合と定義されます.今回の装置の場合,入力としてニッケル水素電池を使用し,出力には白色LEDを4個直列にしています.電力は,それぞれの電圧と流れる電流の積で求まります.手持ちのハンディ・テスタで電流を測定すると,無視できない電圧降下が発生するので,抵抗を挿入し,その抵抗での電圧降下を測定して電流値としました.

HT77xx-14.png

電力測定のために,このような回路を組みました.電源には,ニッケル水素電池を一個使用しています.入力電流は,1.0Ωの抵抗での電圧降下により測定します.また,出力電流は,カレントミラーの10Ω抵抗での電圧降下によって測定します.入出力の電力と効率は,以下のように計算されます.

LEDに流れる電流は7.9mAとそれほど明るいわけでもなく,効率も高くはありません.VOUT端子の電圧が,5.0Vに遠く及ばないことから,ニッケル水素電池一個の電圧では,必要な電力を供給できていない事が考えられます.

ニッケル水素電池を二個にしてみた

入力電圧が足りていないようなので,ニッケル水素電池を二個直列にして,電圧を上げてみました.

HT77xx-15.png

電圧が低いときに比べて,入力電流が少なくなっていることがわかります.にもかかわらず,出力電流は大幅に増加しています.この回路でも効率を計算してみました.

このように,効率は50%を超えました.出力電流も20mAとかなり明るくなっているので,十分に実用的です.

白色LEDを並列に接続したら

ここまで,HT7750Aを規格外で使用してきましたが,基本にもどって,規格に沿って使用すると,どのくらいの効率になるかを測定してみました.

HT77xx-16.png

これが,電力測定に使用した回路です.まずは,電源にニッケル水素電池一個を使用しました.HT7750Aで5.0Vの電圧を発生させて,47Ωの電流制限抵抗付きの白色LEDを並列に並べてあります.LEDの電圧降下が3.1V程度なので,47Ωの抵抗を付けるとLED一つあたり40mAを超える電流が流れる計算になります.ところが,それほどの出力電流は流せないらしく,そこそこの電流が流れました.


それぞれのLEDが消費する電力を出力電力として計算してみました.

項目#1#2#3#4合計
抵抗電圧降下 (V)0.490.460.450.48-
消費電流 (mA)10.49.89.610.240.0
LED電圧降下 (V)3.053.083.093.06-
消費電力 (mW)31.730.229.731.2123

入出力電力と効率は,以下のようになります.

次にニッケル水素電池を2個直列にしてみました.

HT77xx-17.png

ニッケル水素電池一個の場合に比べると,景気良く電流が流れますが,やはり,出力電圧は5.0Vに達していません.入出力電力と効率は,以下のようになります.

電源電圧が高くなると,HT7750Aの出力電圧も高くなり,結果として,電流制限抵抗での電力消費が増えて効率を落としてしまうことがわかりました.

考察

これまで,HT77xxAを使用して,LEDを定電流駆動することができないかとがんばってきたのですが,電流制限抵抗を使用した方が電力効率では優れているようだという結果となってしまいました.もうちょっと,工夫できないかな.

参考文献

スイッチング電源設計入門

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  • 作者: 佐藤 守男
  • 出版社/メーカー: 日刊工業新聞社
  • 発売日: 1998/11
  • メディア: 単行本
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  • 作者: 鈴木 雅臣
  • 出版社/メーカー: CQ出版
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定本 続トランジスタ回路の設計―FET パワーMOS スイッチング回路を実験で解析

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ステップアップコンバータ HT77xxA を規格外で使うお話 (8) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

カレントミラーで電流をセンスする方式をとりましたが,HT7733VOUT端子のインピーダンスが低いため,ある程度のバイアス電流を流さなくてはなりませんでした.もうちょっと,少なくできないでしょうか.

この記事は,メーカが想定している使用例に従わない方法で半導体を使用した,私の個人的な実験メモです.このようにメーカが推奨しない使い方をした場合,結果について誰も保証することはできません.そのため,ご自身の責任の範囲で実験する以外の用途には使用なさらないでください.また,この記事で述べた使い方について,メーカに質問することもご遠慮ください.

カレントミラーの出力インピーダンス

HT77xx-12.png

そもそも,電流源というものは,電圧が変動しても電流が変化しない,つまり,インピーダンスが高いことを特徴としています.カレントミラーもこの特徴を持っていますので,インピーダンスが高くなっており,電流をかすめとる用途には向いていません.

HT7733VOUT端子は,HT7733の電源としても使用されているため,通常のフィードバック入力とは異なり,インピーダンスがそれほど高く設定されていません.そのため,最大0.1mAほどの電流を取り出してしまい,誤差要因になっていました.

エミッタフォロワで,インピーダンス変換する

HT77xx-13.png

出力インピーダンスが高い事が問題なのであれば,増幅器を付けて出力インピーダンスを低くしてやりましょう.HT7733VOUT端子は,電流を引き込む設計になっているようなので,NPN型トランジスタのエミッタフォロワを付けるだけで,十分です.ついでにカレントミラーの電流倍率を65分の一に変更して,出力電流をしぼってみました.

この回路図は,とある装置に組み込むために,LEDの個数などが前回の回路から少々変更されています.そのため,従来の回路図とは直接比較することが出来ないのですが,このように出力電流を22mAにまで増加させることが出来ました.問題は,VOUT端子のインピーダンスだったのかな?

参考文献

スイッチング電源設計入門

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ステップアップコンバータ HT77xxA を規格外で使うお話 (7) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

カレントミラーの使い方が違うとコメントで指摘をされたので,作り直してみました.

この記事は,メーカが想定している使用例に従わない方法で半導体を使用した,私の個人的な実験メモです.このようにメーカが推奨しない使い方をした場合,結果について誰も保証することはできません.そのため,ご自身の責任の範囲で実験する以外の用途には使用なさらないでください.また,この記事で述べた使い方について,メーカに質問することもご遠慮ください.

カレントミラーの原理

HT77xx-09.png

この図で,カレントミラーの原理を説明します.カレントミラーは,二つのトランジスタで構成されており,それぞれのベース電位が共通になっている所に特徴があります.それぞれの理想トランジスタは,ベース・エミッタ間電圧(VBE)が等しいので,それぞれのエミッタ電位も等しくなります.ベース電流を無視して考えると,それぞれのエミッタ抵抗には,それぞれのコレクタ電流が流れます.ここで,それぞれのエミッタ抵抗での電圧降下が等しくなるので,コレクタ電流も等しくなります.

以上のように,右側のトランジスタは,左側のトランジスタのコレクタ電流と同じ電流をコレクタから流そうとする作用を及ぼします.この作用をカレントミラーと呼んでいます.

ここでは,説明のために,エミッタ抵抗を書きましたが,同一シリコン上で作った二つのトランジスタの場合には,原理的に値のそろったエミッタ抵抗が生成されるので,エミッタ抵抗を省略しても特性の良いカレントミラーになります.ディスクリート部品で性能の良いカレントミラーを作る場合には,エミッタ抵抗を外部で用意してやります.

電流の比率をエミッタ抵抗で変化させる

上で説明したカレントミラーでは,二つのトランジスタに値の等しいエミッタ抵抗を使用していました.エミッタ抵抗の値を変えてやったら,どのような動作をするかを考えたのが,この図です.

HT77xx-10.png

この図では,右側のエミッタ抵抗をk倍の値に変更しています.二つのトランジスタのVBEは等しいので,エミッタ抵抗での電圧降下も等しくなります.ところが,右側のエミッタ抵抗の値がk倍になっているので,エミッタ抵抗に流れる電流はk分の1になってしまいます.

結果として,右側のトランジスタのコレクタからは,左側のトランジスタのコレクタ電流のk分の1の電流を流そうとします.つまり,エミッタ抵抗の比率で,コレクタ電流の比率を変えることが出来るというわけです.

現実のトランジスタは,理想とはかけ離れている

HT77xx-11.png

これまでは,理想的なトランジスタを考えてきましたが,実際のトランジスタでは,トランジスタ自身がエミッタ抵抗(RE)をもっています.そのため,右側のコレクタ電流の値は,トランジスタの内部エミッタ抵抗の影響を受けます.

二つのトランジスタの内部エミッタ抵抗の絶対値は,ほぼ等しい値をとります.そのため,k=1の場合には,その影響は相殺されます.また,Rの値がREの値よりも十分に大きい場合にも,影響を与えません.

比率を変えたカレントミラーで実験した結果, 2SA1015 の内部エミッタ抵抗は, 8Ω ほどであることがわかりました.カレントミラーを使用する動機のひとつは, LED の駆動電流を流すことによる損失を抑制することです.そのため,内部エミッタ抵抗 8Ω が無視できるほど大きな値の抵抗は付けたくありません.

そこで,内部エミッタ抵抗の値を加味して,エミッタ抵抗の値を決定することにしました. LED に 20mA の電流を流したときに 1.5mA のセンス電流を流すことにすると,比率は,13.3分の1になります. R=10[Ω]RE=8[Ω] とおくと,kR=231[Ω] が求まります.そこで, kR=220[Ω] としました.

全体の回路図

HT77xx-12.png

全体の回路図は,こうなりました.カレントミラーにトランジスタを数多く使っていたところが,簡単になりました.電流の比率は,12.6倍と目標の13.3倍に近い値におさまっています.

フィードバック電圧が上がらないのは,相変わらずです.LEDに流している電流も,11mAどまりです.ほんとに,何とかしたいな.

参考文献

スイッチング電源設計入門

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ステップアップコンバータ HT77xxA を規格外で使うお話 (6) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

コメントにカレントミラーを使う提案がありましたので,実験してみました.

この記事は,メーカが想定している使用例に従わない方法で半導体を使用した,私の個人的な実験メモです.このようにメーカが推奨しない使い方をした場合,結果について誰も保証することはできません.そのため,ご自身の責任の範囲で実験する以外の用途には使用なさらないでください.また,この記事で述べた使い方について,メーカに質問することもご遠慮ください.

動機:電流センス抵抗での損失を減らしたい

HT77xx-06.png

この図は,電流制限抵抗での電圧降下をそのまま電流センスに使用した回路です.簡単なのですが,電流センス抵抗での電流が大きいために,損失が大きくなります.ただ,この位置に挿入する限り,電流値を減らすことも,電圧降下を減らすことも出来ず,結果として損失を減らせません.

カレントミラーでセンス電流を減少させる

カレントミラーは,二つの端子に流入(または流出)する電流値を等しくする回路です.単純に電流値を等しくするだけではなく,トランジスタの比率を変えることによって,もとの電流に比例した電流値を作ることができます.

HT77xx-08.png

早速回路図です.HT7733A が生成する高電圧で5個のLEDを点灯させるところまでは同じですが,この回路では,電流センス抵抗の代わりにNPNトランジスタ(2SC1815)が入っています.回路図では,トランジスタ1個として書いてありますが,実際には,トランジスタ5個のそれぞれの端子を並列に接続しています.

2SC1815の右には,もう一つ2SC1815がありますが,このトランジスタは,並列接続していません.このカレントミラーでは,左のトランジスタに流入した電流の5分の1の電流を右のトランジスタから引き込みます.実測では,12mAと2.6mA(4.6分の1)でした.

2.6mAの電流は,PNPトランジスタ(2SA1015)から引き出されます.左側の2SA1015も3個のトランジスタを並列接続しています.右側の2SA1015からは,左側の2SA1015から流出する電流の3分の1の電流が流出します.実測では,2.6mAと1.35mA(1.9分の1)でした.

このように,LEDに流れる電流は,理論上15分の1の電流となって,2.2kΩの抵抗に流入し, HT7733A に電流値情報としてフィードバックされます.

この回路の利点は,カレントミラーでの電圧降下が0.6Vと低いために,HT7733Aが必要最低限の電圧を生成することです.電圧が低く抑えられれば,損失も減らすことが出来ます.欠点は,トランジスタを並列にすることで,実装面積が広くなることです.また,ディスクリートなトランジスタで組んだ場合,トランジスタ間のバラツキがあるため,正確な電流倍率が得られません.もちろん,正確な倍率を提供するための回路にすることは出来ますが,素子数が増えて煩雑になります.

さて,この回路では,LEDに20mAの電流を流すつもりでいたのですが,あいかわらず,制御電圧が3.3Vまで達しないままで,思い通りの電流値にはなってくれません.何とかならないものでしょうか.

参考文献

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ステップアップコンバータ HT77xxA を規格外で使うお話 (5) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

電流センス抵抗での電圧降下を HT77xxA にフィードバックすることで,定電流制御ができました.でも,電流センス抵抗での損失がもったいないですよね.

この記事は,メーカが想定している使用例に従わない方法で半導体を使用した,私の個人的な実験メモです.このようにメーカが推奨しない使い方をした場合,結果について誰も保証することはできません.そのため,ご自身の責任の範囲で実験する以外の用途には使用なさらないでください.また,この記事で述べた使い方について,メーカに質問することもご遠慮ください.

電流センス抵抗での損失は,16%

HT77xx-06.png

この回路では,ステップアップコンバータは, 18.4V の電圧をが生成しています.その16%に相当する 3.0V を電流センス抵抗が消費しています.通常の電流センス方式では,センス電圧を低くすることで,電流センス抵抗での損失を抑制しています.ところが, HT77xxA を使う限りにおいては,センス電圧,つまり HT77xxA の設定電圧を低くすることはできません.困りました.

LED一個分だけセンス電圧に加える

HT77xx-07.png

3.0V という電位差をすべて電流センス抵抗で消費させるからもったいないので,この回路図のように一部をLEDに肩代わりしてもらうことにしました.ただし,白色LEDの電圧降下と HT7733A の設定電圧 3.3V では,マージンが無いので,設定電圧 5.0V の HT7750A を使うことにしました.電流値を上げたにもかかわらず,出力電圧は 16.88V まで下がりました.

また,電流センス抵抗と "VOUT" 端子をつなぐ抵抗の値を 470Ω に減らしています.これは, "VOUT" 端子へ流れ込む電流が増えたことによる,センス電圧と "VOUT" 端子の電位差を解消するためです.

この回路にも問題点が無いわけではありません.電流センス回路にLEDを入れてしまったために,センス電圧がLEDの順方向電圧降下に依存してしまいます.このため,電流値を正確に設定することが出来なくなってしまいました.感覚としては,「5Vの電源に47Ωの電流制限抵抗を使ったのと同じ明るさにしたい.」という設定方法になってしまいます.

参考文献

スイッチング電源設計入門

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ステップアップコンバータ HT77xxA を規格外で使うお話 (4) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

HT77xxA で,定電圧出力回路を組んで白色LEDストリングを点灯させることが出来ました.でも,LEDを点灯させるなら,定電流制御の方がカッコイイよね.

この記事は,メーカが想定している使用例に従わない方法で半導体を使用した,私の個人的な実験メモです.このようにメーカが推奨しない使い方をした場合,結果について誰も保証することはできません.そのため,ご自身の責任の範囲で実験する以外の用途には使用なさらないでください.また,この記事で述べた使い方について,メーカに質問することもご遠慮ください.

HT77xxA には,電圧値をフィードバックしている

HT77xx-05.png

HT77xxA は,出力の様子をフィードバックしてスイッチングを制御しています.どんな値をフィードバックしているかというと,出力電圧を分圧した値です.つまり,電圧の情報です.それに対して,LEDを点灯させるときには,流す電流の値が重要になってきます.電圧を一定に制御して,そのうえで,電流制限抵抗で電流値を制御してやる.なんだか,もったいない構成ですよね.

最初から電流値をフィードバックする

そこで,出力電流値をそのままフィードバックできないか考えてみます.もちろん, HT77xxA が受け取るのは,電圧値なので,「LEDに流れる電流値を電圧値に変換する装置」が必要です.そんな,都合のいいものが,簡単に実現できるのでしょうか.

HT77xx-06.png

それが,すでに存在するのです.回路図の電流制限抵抗が,電流値を電圧値に変換する「電流センス抵抗」の役目を果たしてくれます.電流センス抵抗の一方の端子を 1kΩ の抵抗を介して "VOUT" 端子に接続するだけで,おしまいです.もはや,分圧抵抗も必要ありません. 1kΩ の抵抗は,起動時に "VOUT" 端子に電源を供給するために必要です.

このように接続すると,電流センス抵抗での電圧降下が 3.3V (実測では3.0V)になるように出力電圧値を制御してくれるので,結果として定電流駆動になります.さらに,この回路は,電流制御を行っているので,LEDの種類や数を問いません.出力電圧の範囲内であれば,すべてのLEDに等しい電流を流してくれます.

入力電圧にもよりますが,電流値を増やすために電流センス抵抗の値を減らしても, HT77xxA が駆動しきれないので,LEDに流すことの出来る電流は簡単には増やせません.もっと,明るく光らせる方法はないのかな.

参考文献

スイッチング電源設計入門

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  • 作者: 佐藤 守男
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  • 発売日: 1998/11
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ステップアップコンバータ HT77xxA を規格外で使うお話 (3) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

コイルの代わりにトランスを使うことで, HT77xxA をフライバック構成で使用できるらしいことがわかりました.ただし,高い電圧を供給するには,電流が不足してしまうようです.そんなに高い電圧でなくてもいいから,何か実用的な使い方はできないでしょうか.

この記事は,メーカが想定している使用例に従わない方法で半導体を使用した,私の個人的な実験メモです.このようにメーカが推奨しない使い方をした場合,結果について誰も保証することはできません.そのため,ご自身の責任の範囲で実験する以外の用途には使用なさらないでください.また,この記事で述べた使い方について,メーカに質問することもご遠慮ください.

電圧を下げて電流を増やせるか

HT77xx-04.png

前回の記事では,基準電圧3.3Vの約5.5倍の電圧を出力しようとしましたが,そこまでの能力は無いということが判明してしまいました.では,もうちょっと電圧を下げてやると,何かに使えるようになるでしょうか.

そこで,分圧回路に使われている 10kΩ の抵抗を 4.7kΩ に変更して,約3.1倍の出力電圧(3.3V × 3.1 = 10.2V)を出力するように設定しました.その結果, 10.4V の出力が得られました.今回は,この設定で使用してみます.

電圧を高くすると,LEDストリングが使える

LEDを直列に接続したものを LED ストリングと呼んでいます. LED は,流す電流によって明るさが決定されるます. LED を直列に接続すると,すべての LED に等しい電流を流すことができ,結果として明るさをそろえることができます.

反面,直列に接続された LED には,白色LEDで1個当たり約3Vの電圧を与えなくてはならず,高い電圧を供給することが求められます.実験で得られた 10.4V の電源を使うと,3個の白色LEDを直列に接続することができるようになります.さっそく,LEDをつないでみましょう.

白色LED3個を光らせる回路

HT77xx-05.png

白色LEDを3個接続したのが,この回路です.負荷をかけると, "VOUT" 端子の電圧が下がってしまうのは,相変わらずです.もう,誤差だと思ってしまいましょう.

LEDには, 100Ω の電流制限抵抗をを直列につないで,電流値を決めています. 47Ω の抵抗に交換すると電流値は, 13.0mA になりました.流す電流によって,白色LEDの順方向電圧降下が変化するので,決して倍の電流が流れるわけではありません.こんな事情から,電流制限抵抗の値は,カット・アンド・トライで決めることになってしまいます.

参考文献

スイッチング電源設計入門

スイッチング電源設計入門

  • 作者: 佐藤 守男
  • 出版社/メーカー: 日刊工業新聞社
  • 発売日: 1998/11
  • メディア: 単行本

ステップアップコンバータ HT77xxA を規格外で使うお話 (2) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

出力電圧を分圧して HT77xxA の "VOUT" 端子に戻してやって,高い電圧を発生させようとしましたが,保護回路が働いたらしく,思い通りの電圧が出てくれませんでした.いや,こんな事であきらめてはいけないのだ.

この記事は,メーカが想定している使用例に従わない方法で半導体を使用した,私の個人的な実験メモです.このようにメーカが推奨しない使い方をした場合,結果について誰も保証することはできません.そのため,ご自身の責任の範囲で実験する以外の用途には使用なさらないでください.また,この記事で述べた使い方について,メーカに質問することもご遠慮ください.

LX 端子が跳ねるのが問題だ

HT77xx-03.png

前回の回路では, "LX" 端子の MOSFET が OFF すると,コイルに蓄えられたエネルギーはダイオードを介して出力コンデンサに注入されます.このとき,出力電圧にダイオードの順方向電圧降下分を加えた電圧が "LX" 端子に印加されます.

HT7733A の仕様書には, "LX" 端子の最大電圧は明確には規定されていませんが,電源電圧の最大定格の最大値が, VSS+7V とされているので, "LX" 端子にも 7V より高い電圧を印加することは出来ないと考えられます.このことから,出力電圧の最大値は,6.5V付近になるであろうと推測されます.

エネルギーの引き受け先を用意する

この状態を打破するためには,コイルに蓄えられたエネルギーが解放されても, "LX" 端子に高い電圧が発生しない回路を作る必要があります.つまり,エネルギーの引き受け先を別に用意してやれば,良いのです.

コイルには,磁束という姿でエネルギーが蓄積されます.磁束を引き受けるためには,コイルに回路インピーダンスの低い二次巻き線を追加してやります.つまり,トランスを作るのです.

HT77xx-04.png

この図は,二次巻き線でエネルギーを吸い出し,ついでに巻き数比によって高い電圧を作り出すための回路図です.このような回路をフライバックと呼んでいますが,本来のフライバックは,一次側と二次側を絶縁する事に意義があるので,こんな使い方はしないはずです.

二次側に現れた出力電圧は,抵抗で分圧して,ステップアップコンバータにフィードバックします.分圧比を約5.5倍にしたので,出力電圧は,18Vに達しました. "VOUT" 端子の電圧が3.3Vに達していないのは,一次側の電流が制限されたためであろうと推測しています.つまり,この状態では,まったく電流を取り出すことができないということを意味しています.18V出力は,無謀だったようです.

"VOUT" 端子に追加されたダイオードと抵抗は,ステップアップコンバータを起動させるために必要です.前回述べたように,この IC は, "VOUT" 端子を電源として使っています.そのため,起動時には電源を供給する経路が必要です.ところが,フライバック構成にすると,二次側の回路は起動時には電圧を発生しないため, "VOUT" 端子に電源を供給することができません. "Vin" 電源からダイオードを通じて起動時のみに動作する回路を追加したというわけです.

トランスは,自分で巻こう

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この実験で使用したトランスは, digi-key で購入したトロイダル・コア 35T0501-10H に UEW 線を巻いて作成したものです.以前の記事トロイダル・コア・カタログで紹介したトロイダルコアで,透磁率が高く,1ターンあたりのインダクタンスが 5µH もあります.このため,4ターンで 80µH,32ターンで 5.1mH ものインダクタンスを得ることができます.ただし,磁気飽和を起こしやすいので,それほど多くの電流を流すことはできません.この回路の場合,二次側コイルに流すことの出来る電流は,50mAほどであると見積もっています.

参考文献

スイッチング電源設計入門

スイッチング電源設計入門

  • 作者: 佐藤 守男
  • 出版社/メーカー: 日刊工業新聞社
  • 発売日: 1998/11
  • メディア: 単行本
改訂新版 定本 トロイダル・コア活用百科 —トロイダル・コイルの理論・製作と応用回路

改訂新版 定本 トロイダル・コア活用百科 —トロイダル・コイルの理論・製作と応用回路

  • 作者: 山村 英穂
  • 出版社/メーカー: CQ出版
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 単行本

ステップアップコンバータ HT77xxA を規格外で使うお話 (1) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

秋月電子通商で,三端子ステップアップコンバータ HT77xxA を買ってきました.簡単に昇圧型コンバータが構成できる便利な一品です.でも,単に決められた電圧を発生させるだけでは面白くないので,回路例に無い使い方を考えてみました.

この記事は,メーカが想定している使用例に従わない方法で半導体を使用した,私の個人的な実験メモです.このようにメーカが推奨しない使い方をした場合,結果について誰も保証することはできません.そのため,ご自身の責任の範囲で実験する以外の用途には使用なさらないでください.また,この記事で述べた使い方について,メーカに質問することもご遠慮ください.

メーカが推奨する使い方

このステップアップコンバータのメーカである HOLTEK では, HT77xxA という型番のステップアップコンバータICを提供しています.型番の "xx" の部分には,コンバータICの出力電圧が入ります.つまり,本来,このICは,定電圧出力を想定したものです.

HT77xx-01.png

使い方は,いたって簡単です.図のように,コンデンサ2個,ダイオード1個,コイル1個をつなぐだけで,決められた電圧の出力が得られます.最大出力電流は,200mAとされています.

メーカの使用例に従っておけば,よっぽどヘタな配線の引き回しをしないかぎり,所望の出力が得られます.

出力電圧を決める仕組み

HT77xx-02.png

このICでは,昇圧型と呼ばれる回路方式を使用しています. "LX" 端子に内蔵された MOSFET トランジスタが ON/OFF (スイッチング)することによって,コイルに流れる電流を制御し,高電圧を発生させます.発生した高電圧は,ダイオードを介して出力コンデンサに蓄積されます. "VOUT" 端子で,出力コンデンサの電圧を監視して, MOSFET トランジスタのスイッチングにフィードバックをかけます.

フィードバックに分圧器を入れてみた

こういった仕組みなので,所望の出力電圧に達したときに, "VOUT" 端子の電圧が決められた電圧になるように回路を組んでやれば,設定電圧以外の出力も得られます.

HT77xx-03.png

この図は,ICの設定電圧(3.3V)の約1.5倍の出力電圧(4.8V)を発生させるための回路です.出力電圧を 1.0kΩ と 2.2kΩ の抵抗で分圧して "VOUT" 端子に与えます.分圧回路には約 1.5mA の電流が流れます.この電流は,あまり少なくすることが出来ません.それは, "VOUT" 端子がこの IC の電源にもなっており,動作時には実測値で0.02mA ほど電流を引き込むからです.

1.0kΩ の抵抗をもっと大きな値に変更すると,もっと大きな出力電圧が得られそうですが,実際に組んでみても,思い通りの電圧が得られません. 2.2kΩ の抵抗に交換して実測したところ, 6.6V の電圧を期待していたのに, 6.2V の出力しか得られませんでした.原因は, "LX" 端子の電圧が高くなりすぎたために,保護回路が動作したものと推測しています.つまり,この回路では,出力電圧を設定電圧の2倍にするのも難しいという結果となってしまいました.

参考文献

スイッチング電源設計入門

スイッチング電源設計入門

  • 作者: 佐藤 守男
  • 出版社/メーカー: 日刊工業新聞社
  • 発売日: 1998/11
  • メディア: 単行本

フリーランニング・タイマで周期割り込みを実現するには [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

もし,マイコンのタイマの周期が指定できなかったら,周期割り込みはどうやって実現するのでしょうか.

フリーランニング・タイマ

その昔,M68HC11の標準タイマは,フリーランニング・カウンタとインプット・キャプチャ及びアウトプット・コンペアを組み合わせた構成になっていました. フリーランニング・カウンタとは,リセットまたはプリセット機能のないカウンタのことです. 例えば,8ビットのカウンタの場合には,カウンタの値は0からインクリメントされ,255の次はオーバフローを起こして0に戻ります. リセットやプリセットなどの余計な機能がないので,コスト的に有利です.

一方,マイコンを使う側からすると,これほど融通のきかないものはありません. マイコンを使う場合には,一定時間ごとに処理を行うアプリケーションが多くありますが,フリーランニング型のタイマのオーバフローイベントを使うと,タイマの周期を細かく決めることができません. さて,困ったな.

フリーランニング・タイマで周期的割り込みを実装する

free-running-01.png

そんなフリーランニング・タイマでも,周期的に割り込みをかけることは可能です. タイマのアウトプット・コンペア割り込みを使うのです.

アウトプット・コンペア割り込みとは,フリーランニング・カウンタと,あるレジスタ(OCレジスタとしておきます.)に格納した値とを比較し,それらが一致したら発生する割り込みの事です. この仕掛けは,OCレジスタと一致比較器だけで構成されるので,カウンタを別に用意するよりも簡素に作ることができます.

アウトプット・コンペア割り込み処理では,現在のOCレジスタの値に割り込み周期分のカウント値を足して,OCレジスタに書き戻します. すると,次回の割り込みは,必ず一定時間後に発生します.

アウトプット・コンペアは,タイマ落ちに注意が必要

ところが,アウトプット・コンペアを使った周期的割り込みの場合には,大きな問題点があります. 例えば,割り込み処理に時間がかかってしまい,OCレジスタに値を書き込んだ時には,すでにフリーランニング・カウンタがその値を超えてしまっていた場合,次回の割り込みは,いつ発生するでしょうか. その答えは,「フリーランニング・カウンタが一周してきたあと」です.

図の「タイマ落ちが発生する例」では,A地点直前の割り込み処理に手間取って,A地点を通り過ぎてからA地点のカウンタ値をOCレジスタに書き込んでいます. この場合,次回の割り込みは,フリーランニング・カウンタがぐるっと一周してB地点に達するまで発生しません. この現象を「タイマ落ち」と呼んでいましたが,一般的業界用語なのか,特定業界用語なのか,定かではありません.

タイマの周期を指定できる場合にも「タイマ落ち」が発生する可能性があります. しかし,この場合には,影響は軽微で済みます. 割り込み周期が2倍になる程度です. フリーランニング・カウンタが一周する時間に比べたら,はるかに短い時間になると思われます.

フリーランニング・タイマは,便利

とはいうものの,フリーランニング・タイマは,便利です. OCレジスタの値をソフトウェアから変更するだけで,任意の波形を生成することができます. また,異なる周期の割り込みをカウンタ一つで実現することもできます. その特性を理解して,注意して使えば,ソフトウェアが関与する割合が大きい分,色々な工夫が考えられます.

本日の記事は,あくまで,一般的な話題であって,実在の事件,現象,団体,人物などとは,一切関わりがありません.

「オリゲー・フェスタ☆68」で「勝手に電子工作コンテスト」 [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

そろそろ,「オリゲー・フェスタ☆68」が気になる季節になって,参りましたが,みなさま,以下がお過ごしでしょうか. また,このところ,某社の電子工作コンテストが,様々な事情により開かれなくなって,さみしい思いをしておられることと,存じます.

そこで,両者をドッキングして,「オリゲー・フェスタ☆68」で「勝手に電子工作コンテスト」を開いちゃおうかなと,妄想しております. この企画は,「勝手に電子工作コンテスト」という名の通り,勝手に開かれるコンテストになる予定なので,スポンサーの「しがらみ」が一切ありません. そのかわり,スポンサーからの資金援助も一切期待できませんし,豪華賞品を準備することもできません.

そういった条件ですが,「年に一度のお祭に,工作物を展示したい」という方がいらっしゃいましたら,どんどん,ご意見などをお寄せください. うっかり,その気にさせられたら,本気で開催しちゃいます. もう,この際だから,「電子」でなくてもいいかもしれない.

もっとも,五月に私がどんな立場になっているかによって,コンテストの主催ができない事態も考えられます. その時には,どなたか,「しがらみ」の無い方が主催者をやってください. あっ,主催者の立候補も受け付けております.


弘法の筆を選ぶ [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

3296842

新国語辞典

弘法の筆を選ぶ
【意味】上手な人と同じ道具を使うと同じように作業が出来るようになる。(嘘)

某所の動画に触発されて、同じ道具を購入しました。 まずは、カタチから。

購入品目

以下の商品は、参考のために掲げたものであり、この店舗での購入を推薦するものではありません。

白光(HAKKO) ハッコーダッシュ 25W N454P

白光(HAKKO) ハッコーダッシュ 25W N454P

  • 出版社/メーカー: 白光
  • メディア: Tools & Hardware
白光(HAKKO) ハッコーダッシュ用 交換こて先  N454-T-2C

白光(HAKKO) ハッコーダッシュ用 交換こて先 N454-T-2C

  • 出版社/メーカー: 白光
  • メディア: Tools & Hardware
白光(HAKKO) ハッコーダッシュ用 交換こて先  N454-T-3C

白光(HAKKO) ハッコーダッシュ用 交換こて先 N454-T-3C

  • 出版社/メーカー: 白光
  • メディア: Tools & Hardware
ハンダ(無洗浄・RMAタイプ) H-712

ハンダ(無洗浄・RMAタイプ) H-712

  • 出版社/メーカー: ホーザン
  • メディア: その他
goot 無洗浄はんだ 100g SE-06006RMA

goot 無洗浄はんだ 100g SE-06006RMA

  • 出版社/メーカー: 太洋電機産業
  • メディア: Tools & Hardware

マルツパーツ移転 (仙台ローカル) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

昨日、マルツパーツさんからダイレクト葉書をもらいました。 2009年6月1日に仙台五橋(いつつばし)店が仙台上杉(かみすぎ)店に移転するんだそうです。

マルツパーツ館 仙台五橋店

こちらが、移転前の場所です。 近くに東北大学の片平キャンパス(西の広い区画)があり、光通信発祥の地とされる電気通信研究所などがあります。 各種研究所の需要を目指して、ここにあったのだと思っていたのに。

マルツパーツ館 仙台上杉店

こちらが、移転先です。 記事執筆時点ではローソンがあることになっています。 近くには、NHK、仙台放送、ドコモ(税務署の南)などがありますが、電子部品の需要はあるのだろうか。

仙台五橋店は2009年5月27日まで営業だそうです。 仙台で部品を調達する必要がある方はご注意ください。 詳しくは、マルツパーツ公式情報のこちらをご覧ください。


BDMアダプタ [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

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BDMコネクタをバス接続するための「BDMアダプタ」を作成しました。

動機

円高の機会にUSBMULTILINKBDMEを購入しました。 これで、マイコンごとに評価ボードをそろえなくても済みます。 ところが、一つだけ困った問題が発生しました。

いままで作成してきたターゲット基板は、面積に余裕がないこともあり、少しでもコネクタ類は減らしたいと考えてきました。 電源を供給するためのコネクタも、個別にコネクタを配置するよりも、BDMコネクタから給電したほうが、効率的です。 今まで、DEMO9S08QG8評価ボードをMULTILINK代わりに使っていた場合には、DEMO9S08QG8評価ボードが電源を供給することができるので、それも可能でした。

ところが、USBMULTILINKBDMEは、ICP (In-Circuit Programming) や ICD (In-Circuit Debugger) を目的として作られています。 このため、DEMO9S08QG8の on-board MULTILINK のように給電する機能は最初から持っておらず、ターゲット基板は、BDMコネクタと電源を別々に持つ必要がありました。 電源のために、ターゲット基板にコネクタを増やしたくないな。

バスに接続してしまえ

2718127

要は、BDMコネクタがバス状に接続される構成であれば万事解決です。 「そのぐらいなら、作っちゃおう。」というのが、今回の作品です。

BDMコネクタを装備しているターゲットには、三つのBDMコネクタに「ターゲット」「MULTILINK」「電源」をそれぞれ並列に接続します。 これで、BDMコネクタから電源が供給できるようになります。

S-BDMにも対応

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このBDMアダプタには、もう一つ白いコネクタが装備されています。 このコネクタは、私がS-BDMと呼んでいた規格で、BDMコネクタに収められた四つの信号を直列に並べたものです。 並び方は、MC9S08QG8の1から4ピンまでと同一になっているので、ブレッドボードでの工作に大変便利です。

さあ、これでバリバリと開発ができるぞ。

参考文献

HCS08 Unleashed: Designer's Guide to the HCS08 Microcontrollers

HCS08 Unleashed: Designer's Guide to the HCS08 Microcontrollers

  • 作者: Fabio Pereira
  • 出版社/メーカー: Booksurge Llc
  • 発売日: 2007/11/13
  • メディア: ペーパーバック

とある回路図を描いた [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

dsiamp-sch.png

息詰まるようなバックコンバータの設計に疲れて、こういう軽い回路図を描いてみました。 組み立て手順を考えて、コネクタだらけにしましたが、はたして、これでうまくいくのだろうか。

ちなみに、主要部分はデータシートの標準応用回路図そのままです。


LCDモジュールについて考えた (3) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

2475884

なんと、前回の記事から二ヶ月以上経過しちゃいました。 コメントに「マイコン側が常にプッシュプル出力をしていれば良いのではないか」との意見をいただきました。 そこで、今回のテーマは、「出力専用だったらいいのか」です。

実験回路

今回、とりあげたマイコンは、またまたMC9RS08KA8です。 このマイコンは、1.8Vから5.5Vまでの広範囲にわたる電源電圧に対応しています。 今回の実験では、LCDモジュールには、5.1Vのニッケル水素電池を使用しました。 そして、5.1V電源から3.3Vの3端子レギュレータ"TA48M033"を使用して作った3.3V電源をマイコンに供給しています。

今回の実験は、「LCDモジュールにマイコンの出力ポートを接続したらどうなるか。」というのがテーマなので、マイコン側はポートを出力に設定したら「無限ループ」プログラムを実行させてムダに時間をすごさせます。 各端子の設定は、以下のとおりです。

MC9RS08KA8SD1602
#Pin NameOutput#Pin Name
15PTA1LOW4RS
14PTA2LOW5R/W
13PTA3LOW6E
8PTB4LOW11DB4
7PTB5LOW12DB5
6PTB6HIGH13DB6
5PTB7HIGH14DB7

この状態でLCDモジュールの端子とマイコンの端子との間に流れる電流を検出したいので、これらの端子は1kΩの抵抗でつなぎました。

LOW出力の場合

LcdPullupLeak2Low.png

電源を投入して、各端子の電圧を確認しました。 まずは、"LOW"出力の場合からです。 1kΩの抵抗の両端には、0.11Vの電位差があるので、LCDモジュールからMCUに対して100µAの電流が流れていることがわかります。

HIGH出力の場合

LcdPullupLeak2High.png

つぎは、"HIGH"出力の場合です。 1kΩの抵抗の両端には、0.07Vの電位差があるので、LCDモジュールからMCUに対して70µAの電流が流れていることがわかります。

この状態では、ポート出力の電圧はわずかに高くなっているはずです。 このような状態でポートに流し込める電流値は、データ・シートの "DC injection current" という項目に記載されています。 MC9RS08KA8 の場合には、ポートあたり 0.2mA、MCUあたり 0.8mA となっています。 もし、もっと抵抗値が低ければ、仕様書の値を超えてしまう可能性があります。

今回のまとめ

今回の実験では、ポート出力の電圧が最大定格の範囲をはずれることはありませんでした。 しかしながら、LCDモジュールからMCUに定常的に電流が流れてしまうことがわかりました。

このときに流れる電流は、1kΩの抵抗を使ったときに100µA前後になります。 もし、もっと低い抵抗を使うとさらに多くの電流が流れることが予想され、その場合には仕様書に記載された値を満たさない可能性があります。

また、LCDモジュールを使う目的の一つは、電流消費を抑えることだと思いますので、100µAが無視できないというアプリケーションでは注意すべきだろうと考えます。

次回予告

これまでは、LCDモジュールの電気的特性に着目してきました。 次回は、ソフトウェアを書いてみます。

参考文献

トランジスタ技術 (Transistor Gijutsu) 2008年 07月号 [雑誌]

トランジスタ技術 (Transistor Gijutsu) 2008年 07月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: CQ出版
  • 発売日: 2008/06/10
  • メディア: 雑誌
Interface (インターフェース) 2009年 02月号 [雑誌]

Interface (インターフェース) 2009年 02月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: CQ出版
  • 発売日: 2008/12/25
  • メディア: 雑誌
HCS08 Unleashed: Designer's Guide to the HCS08 Microcontrollers

HCS08 Unleashed: Designer's Guide to the HCS08 Microcontrollers

  • 作者: Fabio Pereira
  • 出版社/メーカー: Booksurge Llc
  • 発売日: 2007/11/13
  • メディア: ペーパーバック

ニッケル水素電池の規格を調べる [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

充電器を作るためには、充電される電池の素性を知らなくてはなりません。

秋月電子の単4型電池

おなじみ秋月電子で扱っている電池を調べます。 現在の取り扱い品目は、以下の三つです。

型番NominalMinimumTypicalCharge Condition
GP95AAAHC900mAh900mAh920mAh90mA 16h
GP100AAAHC930mAh930mAh970mAh93mA 16h
GP110AAAHC1030mAh1030mAh1070mAh103mA 16h

90mA から 100mA で 16 時間かけて充電するのが標準的な充電方法だそうです。 どの電池も最大充電電圧は1.5Vとなっています。 充電器からは、充電中の電池容量を判断することはできません。 そのため、少な目の90mAの電流で充電して、16時間経過するか1.5Vに達するかした時点で充電を終了するというシーケンスになると思います。

仕様書には、充電中の電池温度という項目があって、 0°C から 45°C となっています。 これは、温度計も付けなきゃいけないのかなあ。

国産メーカは…

日本にも三洋電機さんのeneloop松下電器さんのEVOLTAなどの製品があるのですが、探しても探しても、仕様書が出てきません。 そもそも、サード・パーティーに充電器を作らせないという戦略のように思えます。 最大放電電流の数値ぐらい、どこかにありそうなものですけどね。

という訳で、集まったのはGPバッテリーの規格だけになってしまいました。

参考サイト

Nickel Metal Hydride : GP Batteries (Hong Kong)
GPバッテリー香港のニッケル水素電池一覧ページです。 下のUSサイトよりも新しいPDFがあるのですが、ここには、なぜかGP110AAAHCがありません。
Nickel Metal Hydride : Gold Peak Industries North America
GPバッテリーのUS支社(だよね)のニッケル水素電池一覧ページです。

トロイダル・コア・カタログ [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

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手持ちのトロイダル・コアでコイルを作成し、LCRメータでインダクタンスを測定してみました。

トロイダル・コア一覧表

品番巻き数インダクタンス tan δ1Tあたり インダクタンス備考
35T0501-10H3T44.8µH0.4134.98µH digi-keyで見つけた、透磁率の大きなSteward社のフェライト・コアです。 ただ、飽和しやすいらしいので使用には注意が必要だと思います。 EMI用というと、コア損が大きいのか?
6T172µH0.1394.78µH
16T1.368mH0.0925.34µH
FT-37#4310T154µH1.6581.54µH アミドン社のフェライト・コアです。 低周波向きの材質なので、インダクタンスを大きくできます。
15T323µH0.9181.44µH
FT-50#4310T125.7µH0.4831.257µH アミドン社のフェライト・コアです。 FT-37#43と同じ材質ですが、径が大きいのでさらにインダクタンスを大きくできるはずだったのに、なぜか低めにでていいるな。
FT-37#6110T7.4µH2.7574nH アミドン社のフェライト・コアです。 #43よりも透磁率の小さな材質で作られた、高周波向けのコアです。
FT-50#6115T20.3µH1.20090.2nH アミドン社のフェライト・コアです。 FT-50#61と比べて径が大きいので、巻き数あたりインダクタンスが大きくなっています。
T68-222T4.2µH5.198.68nH アミドン社のカーボニル鉄ダスト・コアです。 さらに高周波向けのコアなので、巻き数の割にインダクタンスが大きくなりません。

DC-DCコンバータの周波数が上げられないのであれば、インダクタンスを大きくする方法を考えなくては。

参考サイト

Laird Technologies
Steward社は、2006年12月にこの会社に買収された模様です。

参考文献

改訂新版 定本 トロイダル・コア活用百科 —トロイダル・コイルの理論・製作と応用回路

改訂新版 定本 トロイダル・コア活用百科 —トロイダル・コイルの理論・製作と応用回路

  • 作者: 山村 英穂
  • 出版社/メーカー: CQ出版
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 単行本

シリーズレギュレータを作るぞ(シミュレーション編) [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

scilabで遊ぼうで、PID制御を調べました。 今回は、その成果を生かして、シリーズ・レギュレータを作ってみます。

レギュレータ第一号

WS000310.png

まず、最初に試してみるのは、エミッタ出力型のレギュレータです。 OPアンプによる誤差増幅装置とエミッタ・フォロワで構成される回路です。 トランジスタには、2SD2531のシミュレーション・モデルを作るで作成したモデルを使用しています。

WS000311.png

この回路でループ・ゲインを測定すると、位相余裕が40°あることがわかりました。 でも、実際に電源として使うときには、こんな状態では使わせてもらえません。

現実に近いモデルにする

少しでもモデルを現実に近づけるために現実との違いを列挙してみます。

  • 無負荷である

    この回路図では、レギュレータの出力には何もつながっていません。 つまり、無負荷の状態でのシミュレーションです。 負荷をつながないレギュレータというのは、いくらなんでもナンセンスです。 何らかの負荷を接続した状態で安定になることを確認しなくてはなりません。

  • 良くある出力のコンデンサが無い

    この回路図では、レギュレータの回路によく見られる出力部のコンデンサがありません。 ここには、比較的容量の大きい電解コンデンサなどが座っている場合が多くみられます。

    シリーズ・レギュレータは、OPアンプで誤差を増幅して出力電圧を安定化させるので、どうしても高速な変動に対しては遅れをとります。 そのため、出力にコンデンサを付けて高速な変動にはコンデンサに対処してもらいます。

  • 基準電源は、どうする?

    OPアンプの+入力には、2.7Vの基準電源をつないでいます。 ここには、2.7Vのツェナー・ダイオードでもつなごうと思っていますが、適当なツェナー・ダイオードのモデルがありません。 まあ、後で考えることにします。

レギュレータ第二号は、発振器

WS000312.png

実際に使う時の状態をふまえて、500mAの負荷と330µFのコンデンサを出力につけたのが、この回路です。 また、負荷は、過渡解析を考えて、500mAと10mAの間を急速に変動させるモデルにしてあります。

WS000313.png

周波数特性は、こうなりました。 ループ・ゲインは、緑のグラフです。 32kHz付近で利得0dB、位相0°になっている所があります。 位相余裕わずかに0.3°、利得余裕も1.2dBです。

青のグラフがトランジスタ部分の、赤のグラフがOPアンプ部分の周波数特性です。

WS000314.png

過渡シミュレーションにかけると、出力がみごとに発振していることがわかります。 振幅は、14mVP-Pです。 きっと、この程度の電源でもマイコンは動作するんだろうな。 10mA負荷の時の周波数が6kHz、500mA負荷の時の周波数が30kHzになっていました。

レギュレータ第三号で限界感度を調べる

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ここからは、PID制御のパラメータを決めていきます。 まずは、限界感度を調べるために、OPアンプ部分のゲインを可変できるように変更します。 そして、安定して発振を始めるゲインを求めようとしましたが、LM358では、そこまでゲインが上げられないということがわかりました。


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ゲインを75倍の設定にしたとき、周波数特性は、こんなになりました。 OPアンプのゲイン(赤いグラフ)を見てわかるように、31kHz付近はOPアンプの生の特性が出てしまっています。 そのため、抵抗値でゲインを変更しようとしても位相が 0° になる周波数での特性に影響が無いため、いくら抵抗値を変えても発振には至らなかったというわけです。


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ところが、この状態でもレギュレータの出力は完全に安定とはいえない状態です。 この過渡シミュレーションを見てわかるように、負荷の変動によって、出力が発振ぎみになっています。 しかも、負荷によって出力電圧が変わっています。 500mA負荷の時の電圧が3.2298V、 10mA負荷の時の電圧が3.2328V、なので、出力インピーダンスは、6.1mΩ相当ということがわかります。

限界感度法の第一歩は、発振の条件を探ることだったのですが、安定して発振する条件が出せないと計算ができません。 そこで、ここでは、位相余裕が10°になる Kc=75, Tc=32usec を仮の発振条件として計算してみます。

PID制御器のパラメータを計算する

仮に求めた発振条件からPID制御器のパラメータを計算します。

Kc=75
Tc=32u

Kp=Kc*0.6=45
Rs=10k
Rf=Kp*Rs/2=220k
Cs=Tc/(4*Rs)=680p
Cf=Tc/(2*Kp*Rs)=33p
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抵抗値とコンデンサの値は、E6系列の値に合わせこんでいます。 このパラメータを使って、レギュレータ第四号を作りました。


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周波数特性は、こうなりました。 位相余裕が19°、利得余裕が17dBと、リンギングが激しく出る事が予想されます。


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過渡シミュレーションは、こうなりました。 積分制御を取り入れたおかげで、10mAと500mAのどちらの負荷条件でも同じ電圧を示しています。 1m秒の間、4.5mVP-Pのリンギングを発生しているのは、10mA負荷の条件です。 500mA負荷でパラメータの計算をしていたため、10mA負荷の時の周波数特性が悪くなったようです。 また、500mA負荷の場合でも0.2m秒の間、4.5mVP-Pのリンギングを発生しています。

負荷条件の違いを吸収する

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同じ回路なのに、負荷の条件で位相補償が効きません。 そこで、レギュレータ第三号にもどって、10mA負荷の時の周波数特性を調べました。 上が500mA負荷の時、下が10mA負荷のときです。 OPアンプの特性(赤いグラフ)は、ほぼ同じなのですが、トランジスタの特性(青いグラフ)は、カットオフ周波数が異なっています。


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この違いを吸収するために、レギュレータ第三号でトランジスタにベース抵抗を入れてみました。 値は、青いグラフが似たような特性になる220Ωを選びました。


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再び、周波数特性を調べます。 上が500mA負荷の時、下が10mA負荷の時です。 これで、再度挑戦します。

PID制御器なんて、いらなかった

さあ、もう一度PID制御器を設計しようと思ったのですが、このレギュレータは、ゲインをいくら上げても発振しやしない。 さすがにフィードバック抵抗を開放にすると発振しますが、100倍(1MΩ)ではリンギングが出る程度です。 そうか、この回路は、こんなに安定だったんだ。

位相余裕を優先したレギュレータ

Tc=1900µ秒、 Kp=45で計算すると、位相余裕60°を確保した回路になります。

Tc=1900u
Kp=45

Rs=10k
Rf=Kp*Rs/2=220k
Cs=Tc/(4*Rs)=2200p
Cf=Tc/(2*Kp*Rs)=220p
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確かに安定かもしれませんが、20mVもふらつくし、収束まで時間がかかります。

追従性を改善したレギュレータ

Tc=200µ秒、 Kp=66で計算すると、追従性が改善された回路になります。

Tc=200u
Kp=66

Rs=10k
Rf=Kp*Rs/2=330k
Cs=Tc/(4*Rs)=4700p
Cf=Tc/(2*Kp*Rs)=150p
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まだ、20mVP-Pのリンギングが残っています。


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リンギングを抑えるためには、Csを大きくして微分成分だけ増強します。 Cs=15000pF にすると、リンギングは10mVP-Pになりました。


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周波数特性を見てみます。 上が500mA負荷の時の周波数特性で、位相余裕は54°あります。 下が10mA負荷の時の特性で、位相余裕は69°あるのですが、600Hzあたりに30°まで位相が回ったところがあります。 ここが弱点になるかもしれませんね。

リンギング幅を抑えたレギュレータ

Tc=32µ秒、 Kp=94で計算すると、リンギングの周期は増えますが、リンギングの振幅が抑えられた回路になります。

Tc=32u
Kp=94

Rs=10k
Rf=Kp*Rs/2=470k
Cs=Tc/(4*Rs)=680p
Cf=Tc/(2*Kp*Rs)=15p
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リンギングの振幅は、8mVP-Pになりました。


次回は、実験編の予定です。

参考文献

私が持っているのは、ハードカバーです。

定本 OPアンプ回路の設計―再現性を重視した設計の基礎から応用まで

定本 OPアンプ回路の設計―再現性を重視した設計の基礎から応用まで

  • 作者: 岡村 廸夫
  • 出版社/メーカー: CQ出版
  • 発売日: 1990/09
  • メディア: 単行本
OPアンプ回路の設計 改訂版―再現性の重視と統計的手法による回路設計

OPアンプ回路の設計 改訂版―再現性の重視と統計的手法による回路設計

  • 作者: 岡村 廸夫
  • 出版社/メーカー: CQ出版
  • 発売日: 1981/08
  • メディア: 単行本

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