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端子に電源よりも高い電圧を与えると何が起こるか [電子工作]このエントリーを含むはてなブックマーク#

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最近、3.3Vのマイコンに5Vの電圧を印加する使い方が目に付きます。 この使い方の何が問題なのか、半導体の立場から考えます。

寄生ダイオードがONする

ICというのは、一枚のシリコン基板の上に回路を構成したものです。 シリコンに様々な「不純物」を入れて、n型とp型の半導体を作ります。 この図は、CMOSの場合の断面図です。

"Pin"端子には、出力ドライバに使用されているPチャネルMOSFETのドレインであるp型の半導体がつながっています。 また、電源の"VDD"端子は、n型半導体であるシリコン基板につながっています。 そのため、"Pin"端子と"VDD"端子の間には、寄生ダイオードと呼ばれるダイオードが出来上がります。 もし、"Pin"端子の電圧を"VDD"端子の電圧よりも高くすると、この寄生ダイオード"D1"がONして、"Pin"から"VDD"に電流が流れてしまいます。 このため、どの端子もシリコン・ダイオードがONする「VDD+0.7V」の電圧を超えてはなりません。

そのために設けられているのが、絶対最大定格に記述されている端子電圧の許容範囲です。 MC9RS08KA2の場合には、「-0.3 to VDD+0.3」と定められています。 この条件を守っている限り、寄生ダイオードがONすることはありません。

ONするのは、寄生ダイオードだけではない

寄生ダイオードがONするだけなら、大したことないと、思われたのではないでしょうか。 じつは、ONするのは、寄生ダイオードだけでは、ないのです。

断面図を見て判るように、ICはn型p型の領域が入り乱れています。 そのため、油断すると、すぐにPNPまたはNPNのバイポーラ・トランジスタが出来てしまいます。

断面図に示した"Q1"と"Q2"が、その寄生トランジスタの例です。 "D1"がONするということは、PNP型トランジスタ"Q1"のエミッタからベースに電流が流れることを意味します。 すると、"Q1"がONし、エミッタからコレクタにもその"hfe"倍の電流が流れます。 この電流は、となりのNPN型寄生トランジスタ"Q2"のベースからエミッタへの電流になり、"VSS"端子から流れ出します。 すると、こんどは、"Q2"がONし、コレクタからエミッタへとベース電流の"hfe"倍の電流を流します。 この電流は、"VDD"端子から"VSS"端子へと流れる電流です。 また、"Q1"のベース電流を流す効果もあります。 こうなると、電源を切る以外に電流を止めるすべはありません。

このように、PNP型とPNP型のバイポーラ・トランジスタを組み合わせた構成をサイリスタと呼び、一般にこのような現象を「ラッチアップ」と呼んでいます。 ラッチアップが発生したら、バイポーラ・トランジスタの温度の上昇と電流の増加の相乗効果によって、「熱暴走」という状態におちいり、最悪の場合にはICの永久的な破壊につながります。

ラッチアップを起こさないための規定がやはり仕様書に書いてあります。 MC9RS08KA2の場合には、最大注入電流という項目があり、1端子あたり0.2mAとなっています。 これ以上の電流が流れるような事態が発生するとラッチアップが発生する可能性があると考えてよいでしょう。

ラッチアップを起こさないためには

ラッチアップを防ぐためには、端子の電圧を「VDD+0.3V」以内に収め、流入する電流を0.2mA以下にするための保護回路が必要です。 たとえば、10kΩの電流制限抵抗を接続すると、5Vの信号から流入する電流は0.17mAに制限できます。 さらに、"Pin"端子と"VDD"端子の間にクランプとしてショットキー・ダイオードを入れると端子電圧の上昇も防ぐことが出来ます。

おことわり

以上、半導体の立場から見た見解を書きましたが、実はこの説明で使用された断面図は、最新の半導体のものではありません。 そのため、現在の半導体では、もっとラッチアップが発生しにくい構成が使用されているのだろうと思います。 しかし、仕様書の範囲を超えた使い方をした場合に致命的な破壊を引き起こすということに間違いは無いので、使用条件を十分に吟味して設計されることをお勧めします。

参考文献

微細加工―サブミクロン素子への展開

微細加工―サブミクロン素子への展開

  • 作者: 中野 朝安
  • 出版社/メーカー: 東京電機大学出版局
  • 発売日: 1989/03
  • メディア: -

星野先生、ご無沙汰しております。

Interface (インターフェース) 2009年 02月号 [雑誌]

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: CQ出版
  • 発売日: 2008/12/25
  • メディア: 雑誌

この記事の発端は、インターフェースの記事でした。


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コメント 3

hamayan

なるほど、判り易かったです。
by hamayan (2008-12-31 09:01) 

Sim

こんにちは
最近のICだとクランプ用ダイオードがI/Oについてたりしないのでしょうか?

by Sim (2009-01-04 18:16) 

noritan

最近のICでなくても、昔からMOS入力にはクランプ用ダイオードが付いています。ただ、これらのダイオードは、耐静電破壊用の入力保護素子なので、通常の使用状態で電流を流すようには考えられていません。また、クランプ用ダイオードといっても図の「D1」と同じ構成になってしまうので、電流を流すと同じ問題が起こりかねません。

クランプ用ダイオードで問題が起きないようにするには、ダイオード素子を他の素子と絶縁してバイポーラ・トランジスタにならないようにする必要があります。IBMで開発された Silicon On Insulator (SOI) は、絶縁層の上に回路を作るので、安心です。でも、なにぶん、お値段が。

他には、バイポーラトランジスタとして動作しないように「ベース」部分を厚くするという方法もあります。要するに、素子同士の間隔を広く取るということなのですが、当然集積度は下がります。

私が知っていることをここですべて書けるわけではないので、このぐらいでご容赦ください。私からは、「せめて、絶対定格を守ってお使いください。」としか言えません。

by noritan (2009-01-07 12:43) 

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